公演活動再開にあたって Statement 2022

ごあいさつ

 コロナ禍の影響で中断されていた公演活動を再開した櫻井郁也が、いま再び、作品制作を進めております。

 上掲の写真に重ねた文章は、コロナ発生直後に継続的な活動が断ち切られた当時の櫻井の創作ノートに記されたメモの一部ですが、この発語から現在にいたる日々の行動や社会変化への思いから生み出される作品がこのたび発表される最新作であり、そこにはパンデミックによる個的な精神的肉体的影響と戦争の発生や経済不安を始めとする社会的変動への心象が交錯し、「現在なるもの」との対峙感が、鮮烈に反映されます。

 櫻井郁也は、舞踏のパイオニアの一人である笠井叡に師事ののちコンテンポラリーダンス/舞踏のフィールドにおいて1997年から独立した公演活動を行なってきたダンサーで、コンスタントな独舞上演を通じて「個」からはじまるもの、「ひとつのからだ」による表現の可能性を追求し続けてきました。

 2001年9.11同時多発テロ事件に触れて上演された《非暴力と不服従のダンス》を起点に、東京・中野の「plan-B」を拠点として開始された櫻井のソロシリーズは、観客とダンサーが接近する空間で展開される高密度のダンスパフォーマンスとして、個人が個人を見つめるダンスの現場として高い評価を得ながら毎年持続され、ポルトガル招聘公演(2006)、ルクセンブルク招聘公演(2012)、長崎原爆70年忌公演(2015)をはじめ、 海外公演や国内主要芸術祭などにもつながる活動基盤となってきました。

 そして、コロナ禍による2020年の全ての公演中止に始まる様々な壁を経て、2021年夏に東京・六本木のストライプハウスギャラリーの協力を得て新たな公演活動を再開いたしました。ストライプハウスギャラリーは現代美術を牽引してきた歴史あるアートギャラリーであると同時に、舞踏との関わりも非常に深く、多くのダンサーが踊った場所でもあります。

 櫻井の新たな挑戦として、同時に、コロナ禍での経験を経て生まれて来る特別な場として、また、踊りの灯をつなぐ現場として、これから展開する活動に、ぜひ、ご注目ください。


(2022年5月 十字舎房・制作部)




こんなことを、2021年の夏に書いた。

『コロナ禍によって生活が変わってゆくこのありさまが、恐ろしく感じます。人と人の分断をいかに防ぐことができるか、あるいは、取り戻してゆくことができるか。いま僕らは、突然のこの危機によって何を失い、そして何を再起してゆくのか。そのようなことを考えさせられています。ささやかなことかもしれないけれど、この耐え難い空白の時間のなかで、この小さな身体の営みについて、そして長く関わってきた「踊り」なるものについて、もういちどアタラシイ出発を探し直したいと、、、。』

そして一年を過ごした。

同じ季節、同じ場所で、新しい作品を踊ることになった。

いま何ができるのだろうか、と言うより、この瞬間にこそ出来ることがあるはず、という感覚の方が遥かに強い。

疫病の日々は様々なものを変えた。世界の変化を目の当たりにしながら、いまいる。

この身この肉この命なるものに対して、際立って意識されてくるものが、今とても多い。

ココから、本当の根っこに向かってゆく現場になるのでは、そんな気がしてならない。

何もかも、まだまだまだまだ変化する=更新サレル、に違いない。

動き続けるこの現在とのダンスを、続けたい。

(櫻井郁也 2022)


【主催団体の紹介】


櫻井郁也/十字舎房

Sakurai Ikuya/CROSS SECTION

櫻井郁也/十字舎房(Sakurai Ikuya/CROSS SECTION)は、舞踊家・櫻井郁也と美術家・櫻井恵美子が運営する舞台芸術ユニットです。1997年の設立以来、国内/海外でのダンス公演と定期的なクラスおよびワークショップの開催を通じて、現代ダンス(舞踏、コンテンポラリー、オイリュトミー)の紹介・普及・教育を主な活動としており、同時に、フェスティバル等への作品提供、舞台グループ・映像作品・TV番組などのための振付・演出、写真・映像・アート作品の制作展示、などを行っています。

私たちが目指すのは、身体表現(ダンス/舞踏)、美術、音楽、照明によるトータルアートとして、人の心に食い込むような、感性を呼び起こす作品を生み出すこと、その場に居合わせた人の生きる力、生きる喜びを呼び起こすような「踊り・アートの場」を生み出すことです。公演の場は、現代の日本では体験することのできない、古代の「儀式の場」に近いかもしれません。そして、レッスンでは、さまざまな人が響き合いながら、感性とカラダの「目覚めの場」を共有しています。

私たちは芸術の力を信じることで、私たちのやり方で社会や生活に向き合い、表現の自由が人間の自由につながることを願ってやみません。


※最新情報、稽古写真、作品ノートなどを、随時、ブログに掲載いたします。ぜひご覧ください。

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